人生の質を高める「強い目標」設定術:心に響く達成の秘訣
目標設定は夢を現実にする第一歩
「SMART原則」という言葉を耳にしたことがありますか?。Specific(具体的に)、Measurable(測定可能に)、Achievable(達成可能に)、Relevant(関連性を持って)、Time-bound(期限を設けて)という5つの頭文字を取ったこの原則は、目標設定の基本と言われています。しかし、いざ自分の目標を立ててみようとすると、「なかなかうまくいかないな」「途中で挫折してしまうんだ」といった経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
特に私たち日本人は、周りの人との調和を大切にする文化や、謙虚な国民性から、「あまり高すぎる目標は立てにくいな」「人からどう思われるか気になる」といった気持ちになりがちです。ですが、目標は私たちの秘めた可能性を最大限に引き出し、より良い未来を築くための大切な道しるべとなります。この記事では、私たちにとってより実践的で、心に響く「強い目標」の作り方と、その達成を後押しする秘訣を、具体的な部門ごとの例を交えながらご紹介してまいります。
1. 人事部門の「攻めの目標」を設定する
人事部門の目標は、往々にして「漠然としてしまいがち」という課題があります。「従業員の満足度を高める」「採用力を強化する」といった言葉は耳には心地よいですが、これだけでは具体的な行動には繋がりませんし、達成できたかどうかを測ることも難しいですよね。
過去を振り返り、未来を描く
まず重要なのは、単に「今年の目標」を立てるのではなく、過去の出来事を振り返り、そこから未来への挑戦を見つけ出すことです。
-
昨年をじっくりと振り返る:昨年立てた主な目標は何だったでしょうか? その目標はどれくらい達成できたでしょう? 具体的にうまくいった点、うまくいかなかった点は何だったか? これらを従業員の皆さんとじっくり話し合い、少なくともそれぞれ3点ずつ洗い出してみましょう。
-
「もっと良くするには?」を追求する:昨年うまくいかなかった点を踏まえて、「来年はどうすればもっと良くなるだろうか?」「去年と何を変えようか?」を具体的に考えていきます。これは、今の状態を維持するだけでなく、自分自身を変革し、成長を促すための問いかけです。
「達成可能」かつ「適度な挑戦」を盛り込む
目標は「達成可能」であるべきですが、同時に「少し頑張らないと届かない」くらいの、適度な挑戦を含んでいる必要があります。いわゆる「ストレッチゴール」と呼ばれるものです。
例えば、人事部の給与担当のAさんの例を考えてみましょう。例年通り「給与調査に参加し、市場の動向を分析し、給与調整計画を立てる」だけでは、目標とは呼べませんよね。
-
去年の反省から課題を見つける:「去年の職務等級の割り当てが不十分だった」という反省があったとします。
-
課題解決に向けた具体的な目標を設定する:その場合、今年の目標は「現場のマネージャーと連携し、職務等級の割り当ての精度を80%以上に高める」といったものになります。
-
具体的な行動計画を立てる:この目標を達成するために、「職務等級の割り当てに関する研修を導入する」などの具体的な行動計画まで落とし込むことで、より「強い目標」となります。
会社の戦略に紐づける
目標設定において最も大切なのは、会社の戦略目標と連動させることです。多くの部門は、自分たちの部署の都合だけで目標を立ててしまいがちですが、これでは会社全体の目標達成には繋がりません。
-
会社全体の目標を理解する:部門長は、まず会社の戦略目標を深く理解し、自分たちの部門がその目標達成にどのように貢献できるかを明確にすることから始めましょう。
-
経営層との対話:経営層が各部門の目標設定のプロセスに積極的に関わり、部門長や事業部長と話し合うことで、部門の目標が会社の戦略と確実に連携します。
-
「高すぎず、低すぎず」の挑戦目標:目標は、現実的で測定可能、具体的であるだけでなく、従業員が「少し努力すれば届く」ような挑戦的なものであるべきです。
合意形成と柔軟な調整
目標は、上から一方的に押し付けられるものではありません。従業員の皆さんと活発に議論を交わし、異なる意見を尊重し、最終的に全員が納得できる合意を形成することが大切です。皆で話し合って決めた目標は、従業員の自律性を高め、達成への強いやる気を生み出します。
また、日本の市場環境は変化が激しく、計画通りにいかないことも多々あります。そのため、年に一度目標を設定したら終わりではなく、3ヶ月に一度程度の見直しを行い、外部環境の変化に合わせて目標を細かく調整する「動的な調整」を取り入れることが、成功への鍵となります。
2. バックオフィス部門の「貢献を可視化する目標」を設定する
営業部門の目標は売上額など比較的明確ですが、経理部、総務部、情報システム部といったバックオフィス部門の目標設定は難しいと感じるかもしれません。しかし、彼らの貢献は会社の土台を支えるものであり、その成果をはっきりと目に見える形にすることは非常に重要です。
財務成果、運用成果、行動成果に注目する
バックオフィス部門の目標は、以下の3つの視点から設定します。
-
財務成果:経費の削減、生産性の向上による利益への貢献など、最終的に会社の財務状況に影響を与える成果です。
例:「経費精算のプロセスをデジタル化することで、人件費を年間〇〇万円削減する。」 -
運用成果:サービスの質、お客様の満足度(社内の従業員も含む)、業務の効率など、日々の業務に関わる成果です。
例:「社内ヘルプデスクの平均応答時間を5分以内に短縮し、利用者満足度を90%以上にする。」 -
行動成果:スキルや知識の活用、新しい仕組みの導入など、特定の行動によってもたらされる成果です。
例:「新しい会計ソフトの導入プロジェクトを成功させ、経理担当者の残業時間を月間20時間削減する。」
あらゆる目標を「数値化」する
「バックオフィス部門の仕事は数値にしにくい」という声も聞かれますが、実はどのような目標でも具体的な指標を設定することは可能です。例えば、「文書管理を改善する」という目標であれば、「大切な文書の検索時間を平均30秒以内に短縮する」「ペーパーレス化率を20%向上させる」といった具体的な数値目標に落とし込むことができます。
明確で客観的な数値目標は、評価を公平にし、達成までの道のりをはっきりさせるだけでなく、達成した時の喜びも大きなものとなります。
3. 営業部門の「挑戦と成長を促す目標」を設定する
営業部門の目標は毎年上がっていくのが常であり、時には「これは無理だろう」と感じるほどの高い目標が課せられることもあります。しかし、組織が成長するには、従業員一人ひとりの成長が不可欠であり、高い目標はそれを後押しする良い機会でもあります。
成長への理解と共感
「目標が高すぎると不満が出る」というのはよく聞く話ですが、そこで重要なのは、組織の成長と個人の成長が密接に結びついていることを従業員の皆さんに理解してもらうことです。
-
組織と個人の一体感:会社が成長し、競争力を高めるためには、従業員一人ひとりのスキルアップと仕事の効率向上が不可欠です。高い目標は、自分の能力を最大限に引き出すための挑戦であると伝えましょう。
-
市場の変化への対応:市場の状況は常に変化しています。目標が調整される可能性があること、そしてそれが自分一人だけの問題ではないことを明確にすることで、不安を和らげ、目標達成への集中を促します。
-
個人の潜在能力の開花:人は誰もが計り知れない潜在能力を持っています。高い目標は、その潜在能力を引き出し、より素晴らしい自分へと成長するきっかけとなります。
達成を支援する仕組み
高い目標を設定するだけでなく、その達成を支援する具体的な仕組みを用意することが不可欠です。
-
行動計画の共有:目標達成のための具体的な行動計画を、上司と部下で共有し、定期的に進捗を確認します。
-
障害の特定と排除:目標達成を妨げる可能性のある障害を事前に見つけ出し、それらを取り除くための協力体制を築きます。
-
ご褒美との連動:目標達成が、昇進、昇給、ボーナスといった具体的なご褒美と連動することで、さらに強力なやる気が生まれます。

4. 研究開発部門の「不確実性を乗り越える目標」を設定する
研究開発部門は、その仕事の特性上、成果がすぐには見えにくい、不確実性が高い、成功と失敗が入り混じる、といった困難を抱えています。そのため、目標設定も一筋縄ではいきません。
抽象的な業務を「見える化」する
研究開発の目標設定では、漠然とした業務を具体的な成果へと「見える化」する工夫が必要です。
-
WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー)の活用:プロジェクト全体を最小単位の作業にまで分解し、それぞれの作業にかかる時間、費用、品質(結果)を明確にします。
-
主要な節目(マイルストーン)の設定:研究開発のプロジェクトでは、最終的な成果だけでなく、途中の主要な節目を目標として設定することが有効です。
例:「〇〇技術の試作品を〇月〇日までに完成させる。」
例:「〇〇に関する論文を〇月〇日までに発表する。」
例:「新しい材料開発における初期評価試験を〇月〇日までに完了させ、〇%の成功率を達成する。」
これらの節目目標は、プロジェクトの進捗を管理しやすくするだけでなく、研究者自身のやる気を維持することにも繋がります。
5. 「強い目標」を現実にするための3つの秘訣
カリフォルニア沖で大会に臨んでいたトライアスロン選手のBさんは、濃い霧のためにゴールが見えず、あと少しというところで諦めてしまいました。彼女は後に、「疲労でも寒さでもなく、目標が見えなかったから諦めた」と語ったそうです。
この話が示唆するように、目標は「見える」ことが何よりも大切です。しかし、「高すぎる目標はNG」というわけではありません。目標設定には、効果的な秘訣があります。
(1)会社の戦略から個人目標へ「分解」する
会社の大きな夢や戦略目標を、年、四半期、月、週といった時間の流れ、そして本部、部門、課、個人といった組織の単位で細かく分解していきます。
-
目標の連鎖:会社全体の売上目標が、各営業エリア、都道府県、市町村の売上目標へと分解され、さらに個人の売上目標へと繋がっていきます。
-
具体的な指標:会社のコスト削減目標は、購買部門の原材料コスト削減、製造部門の生産コスト削減、運送部門の運送コスト削減、さらには事務部門の事務用品費削減といった具体的な指標に落とし込まれます。
-
目標ネットワークの構築:このように目標を分解し、目に見える形にすることで、誰でも自分の仕事が会社全体のどの目標に貢献しているのかが「地図を見るように」理解できるようになります。
(2)多角的な視点で「分類」する
目標は、様々な視点から分類することで、より全体を捉え、効果的に設定できます。
-
経営目標と管理目標:
-
経営目標:売上高、費用額、利益率など、事業の経済的な成果に関する目標です。
-
管理目標:お客様の維持率、新しい製品開発計画の達成率、製品の合格率、不良品率、事故発生回数など、日々の業務の進め方や組織の運営に関する目標です。
-
-
階層別目標:会社目標、部門目標、個人目標といった組織の段階に合わせた目標です。
-
定量目標と定性目標:
-
定量目標:売上高、生産量など、数値で明確に測定できる目標です。
-
定性目標:制度の構築、チーム作り、仕事への態度など、数値化しにくいけれど、評価基準を明確にできる目標です。
-
これらの目標は互いに連携しています。例えば、「会社の年間売上高」は経営目標であり、会社目標であり、数値で測れる目標です。一方、「人事制度の改善」は管理目標であり、部門目標であり、数値化しにくいけれど内容で評価する目標です。会社の成熟度に合わせて、適切な目標の種類を選ぶことが重要です。
(3)「双方向の対話」で合意形成する
目標設定は、トップダウンだけでなく、ボトムアップ、あるいはその両方を組み合わせた双方向の対話を通じて行われるべきです。
-
経営層からの発信:社長は、会社の戦略目標をすべての従業員に明確に伝えます。
-
部門長との詳しい議論:部門長や大切な役割を担う従業員に対しては、経営層が会社の重要な経営目標や管理目標について詳しく説明します。
-
部門間の相互理解:各部門は、自分たちの目標が他の部門の目標とどのように関連しているかを理解し、協力する体制を築きます。
-
上司と部下の個別面談:上司は部下一人ひとりと向き合い、個人の目標について丁寧に話し合い、最終的な合意を形成します。
「キー・リザルト(主要な成果)」を分解する
OKR(目標と主要な成果)という目標管理の手法では、企業の大きな目標を達成するために、どのような「主要な成果」を出すべきかを設定します。そして、この「主要な成果」をさらに細かく分け、それぞれの部門や個人の目標へと落とし込んでいきます。
例えば、会社の経営者が「株主価値の向上」という目標(O)を掲げたとします。そのための「主要な成果(KR)」として、「新規株式公開(IPO)の成功」と「売上高5億円達成」が設定されたとします。
この「主要な成果」を達成するために、今度はCさんや営業部長が、それぞれ自身の目標として受け止め、さらに具体的な「主要な成果」を分解していきます。
まとめ:目標は未来を創る原動力
目標は、単なる数字や言葉の羅列ではありません。それは、私たちがどこへ向かい、何を成し遂げたいのかを示す、未来への宣言です。設定した目標が「適度な挑戦」を含み、常に「見える化」され、そして達成への「サポート体制」が整っていれば、私たちはどんな困難も乗り越え、自己の潜在能力を最大限に引き出すことができるでしょう。
この記事でご紹介した目標設定のヒントが、皆さんの仕事や人生において、「強い目標」を立て、それを実現する一助となれば幸いです。目標達成の喜びを分かち合い、共に成長していきましょう。



